グラスのふちの水滴を人さし指で追いかけて
薄く彫られた葉脈の一つ一つをたどってゆく
温かな血が通いはじめるよ
硬く閉じていた蕾のどこからかが開く花びらのように
水滴がふるりと落ちて
ぶっきらぼうな難しい顔と
邪魔くさそうに寝転がっている言葉
忘れた頃に擦り寄ってきて
邪険にされてべそかいている
犬でもない
猫でもない
水滴がふるりと笑って
透明で静かなグラスのふち
かなたの向こうに夏が待っている
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お写真はJILLEさんの
「 Time 」